自宅でサロンを開業されたり、これから始めようと考えたりしているあなたは
「開業届って出さないといけないの?」「出さないと何か問題があるのかな?」と気になっているかもしれません。
特に自宅の一室を使うような小規模なサロンだと、「プロとしてやっていくわけじゃないし、まだいいか」と考えてしまうこともあるかもしれません。
でも、実は開業届を出さないことには、あなたが想像している以上にいくつかの無視できないリスクが潜んでいます。
この記事では、自宅サロンの開業届について、出さないと具体的にどんなリスクがあるのか、税務署にバレる可能性はどれくらいあるのか、そして「じゃあ、どうすればいいの?」というあなたの疑問に答えるため、今すぐ確認したい注意点と具体的な提出ステップを、サロン経営初心者の方にも分かりやすく徹底解説します。
自宅サロンでも開業届は「原則必要」です!結論からお伝えします
まずは、あなたが一番知りたい結論からお伝えします。
自宅の一部を使っているとしても、サービスの提供を継続的に行い収入を得ているなら、それは税法上「事業」とみなされます。
そして、国内で新たに事業を開始した個人は、事業開始の事実があった日から原則として1ヶ月以内に税務署に「個人事業の開業・廃業等届出書」、通称「開業届」を提出することが所得税法という法律で定められています。
これは自宅サロンも例外ではありません。
なぜ自宅サロンでも開業届が必要なのか
国は、個人がどのような事業でどれくらいの収入を得ているかを把握し、適切に税金を計算・徴収するために、事業を開始した際の届け出を義務付けています。
開業届を出すことは、あなたが個人として事業を始めたことを国(税務署)に知らせるための「名刺」のようなものです。
この届け出をすることで、あなたは税務上の「個人事業主」として扱われるようになります。
「事業」ってどこからが事業?
事業とは、一般的に「営利性(儲けを出すこと)」「有償性(対価を得てサービスや商品を提供すること)」「継続性(繰り返し行うこと)」「反復性(同種の行為を何度も行うこと)」「企画遂行性(計画を立てて実行すること)」といった要素がある活動を指します。
自宅サロンで継続的に施術料金やサービス料を受け取っているなら、これらの要素に当てはまるため、規模の大小に関わらず事業とみなされる可能性が高いです。
開業届を出さないことの結論的なリスクとは
開業届を出さないことによる最大のリスクは、主に税金に関わる大きなデメリットと、社会的な信用を得にくいという点の2つです。
すぐに何か法的に罰せられるというよりは、事業を続けていく上で本来受けられるメリットを逃したり、将来的に困る状況が発生したりする可能性が高まります。
これからその具体的なリスクについて詳しく見ていきましょう。
開業届を出さないことで発生する具体的な「税金のリスク」
開業届を出さない場合に最も影響が大きいのが、やはり税金に関する部分です。
正しく届け出を行わないことで、本来支払う必要のない余分な税金を払うことになったり、本来受けられるはずの大きな節税メリットを逃したりすることになります。
具体的にどのような税金のリスクがあるのか、初心者にも分かりやすく解説します。
青色申告の特別控除が受けられない大きな損失
個人事業主になると、毎年2月から3月にかけて行う確定申告で、その年の所得とそれにかかる税金を計算して税務署に報告する必要があります。
この確定申告には「白色申告」と「青色申告」の2種類があります。
青色申告で確定申告を行うと、要件を満たせば最大で65万円、または10万円の「青色申告特別控除」という金額を、あなたの所得から差し引くことができます。
所得が減るということは、それにかかる税金も安くなるということです。
しかし、開業届を提出していないと、原則としてこの青色申告を選択することができません。
つまり、開業届を出さないだけで、この年間最大65万円もの節税メリットをまるごと受けられなくなってしまうのです。
青色申告と白色申告ってどう違うの?
白色申告は手続きや帳簿付けが比較的シンプルですが、受けられる控除(所得から差し引ける金額)が少なく、税金計算上のメリットはあまりありません。
一方、青色申告は、簡易的な帳簿付け(簡易簿記)なら10万円、正規の帳簿付け(複式簿記)なら最大65万円の特別控除を受けることができます。
複式簿記と聞くと難しそうですが、最近は使いやすい会計ソフトがたくさんあります。
税金のメリットを考えると、多くの場合、青色申告を選択するのがおすすめです。
無申告加算税や延滞税が発生する可能性
事業で一定以上の利益(所得)が出ているにも関わらず、開業届を出さず、さらに確定申告も行わない状態を「無申告」といいます。
税務署から所得を指摘された場合、本来納めるべき税金に加えて、重いペナルティとして「無申告加算税」や「延滞税」が課される可能性があります。
無申告加算税は、本来納めるべき税額に対して通常15%(50万円を超える部分は20%)が上乗せされます。
延滞税は、納付期限から実際に納めるまでの日数に応じてかかる利息のようなもので、納付が遅れるほど税額が増えていきます。
これらのペナルティが加算されると、本来納めるべき税金よりも大幅に負担が増えてしまうことになります。
経費として認められない可能性による税金負担増
事業を行う上で発生した費用は「経費」として、売上から差し引くことができます。
これにより、税金がかかる対象となる「所得」を減らすことができます。
自宅サロンの場合、家賃の一部や光熱費の一部、通信費、材料費、広告費などが経費になり得ます。
しかし、開業届を出さずに事業の実態を証明する formal な書類がない状態だと、税務調査などが入った際に、あなたが主張する経費が認められないリスクが高まります。
「これは本当に事業で使った費用なのか?」という証明が難しくなるためです。
経費として認められない分だけ所得が増え、結果的に支払うべき税金が増えてしまうことになります。
税務署に「バレる可能性」はゼロではない理由
「自宅サロンだし、細々とやっているから税務署にバレるはずがない」と思っていませんか?
確かに、全ての個人事業主、全ての自宅サロンを税務署がリアルタイムに把握するのは難しいかもしれません。
しかし、税務署は様々な方法で情報を収集しており、あなたが事業を行っていることがバレる可能性は十分にあり、リスクはゼロではありません。
情報は意外なところから税務署に伝わる
税務署は、あなたの確定申告の情報だけでなく、他の機関や事業者から様々な情報を集めています。
例えば、銀行からの一定額以上の入金に関する情報や、あなたが利用している決済サービス会社からの支払いデータなどが税務署に伝わることがあります。
また、もしあなたがどこかの企業から業務委託のような形で報酬を受け取っている場合、その企業が税務署に支払調書を提出しており、そこからあなたの所得が把握されることもあります。
取引先やお客様からの情報
あなたがサロンで使用する化粧品や備品を特定の業者から継続的に購入している場合、その業者さんが税務調査を受けた際に、あなたのサロンとの取引記録が見つかる可能性があります。
また、ごく稀なケースですが、お客様との間でトラブルが発生したり、お客様が何らかの理由で税務署に情報提供したりすることも可能性としては否定できません。
税務署の調査は様々な方法で行われる
税務署は、ランダムに個人事業主を選んで調査を行うこともありますし、特定の業種(例えば、美容やリラクゼーションなど)を対象に集中的な調査を行うこともあります。
インターネットやSNSなどで積極的に集客を行っている場合、そこでの情報が税務署の目に留まることも考えられます。
「自宅だから大丈夫」と過信せず、事業規模が大きくなるほどバレるリスクは高まるということを理解しておきましょう。
開業届を出さないことによる「その他のリスク」
税金に関するリスク以外にも、開業届を出さないことで、あなたの自宅サロンの運営や将来的な発展において不利になる可能性のあるリスクが存在します。
社会的な信用が得られにくいデメリット
開業届を提出し、税務署に「個人事業主として登録されている」という状態は、あなたが社会的に認められた形で事業を行っていることの証明になります。
この「信用」は、事業を続けていく上で様々な場面で必要になります。
例えば、将来的に自宅ではなくテナントを借りてサロンを開業したいと考えた際に、不動産業者や大家さんはあなたの事業の実態や継続性を確認します。
開業届を出していないと、事業を行っているという証明が難しくなり、審査が通りにくくなる可能性があります。
補助金や融資の審査に影響が出る可能性
事業をさらに発展させるために、新しい技術を習得したり、高額な美容機器を導入したりする資金が必要になることがあるかもしれません。
そのような場合に活用を検討できるのが、国や自治体が行う補助金制度や、銀行などの金融機関による事業融資です。
しかし、これらの多くは、開業届を提出しているなど、正式に事業を行っていることが申請の条件となっています。
開業届を出していないことで、事業拡大のために使えるはずだった公的な支援や資金調達の機会を逃してしまうリスクがあります。
屋号名義の銀行口座が作れない不便さ
あなたのサロン専用の銀行口座を持っていますか?
プライベートのお金の管理と事業のお金の管理を分けることは、確定申告をする際に取引の流れを把握しやすくするためにとても重要です。
事業用の入金・出金だけを行う口座があれば、経費の計算などが格段に楽になります。
しかし、多くの銀行で、個人事業主がサロンの「屋号」(例:「○○ビューティー」のようなお店の名前)で口座を開設する場合、開業届の控えなど、事業を行っていることを証明する書類の提出を求められます。
開業届を出していないと、事業専用の口座を開設するのが難しく、お金の管理が煩雑になる不便さがあります。
開業届を「出すことのメリット」を知って不安を解消しよう
ここまで開業届を出さないことのリスクについて詳しく見てきましたが、逆に開業届を出すことで、多くのメリットを得ることができます。
「リスクがあるなら出した方が安心だな」と感じ始めたあなたは、ぜひ開業届を出すことで得られる具体的なメリットを知って、不安を解消しましょう。
税金がお得になる青色申告とは
開業届と同時に「所得税の青色申告承認申請書」を提出することで、青色申告を選択できるようになります。
青色申告の最大のメリットは、繰り返しになりますが、最大65万円の青色申告特別控除を受けられることによる大きな節税効果です。
例えば、あなたのサロンの1年間の所得(売上から経費を引いた金額)が300万円だったとします。
白色申告の場合は300万円全てが所得として税金計算の対象になりますが、青色申告(65万円控除)なら、300万円 – 65万円 = 235万円が所得として計算の対象になります。
この差額65万円にかかる税金がゼロになると考えれば、その節税効果の大きさがわかると思います。
他にも、青色申告には赤字を翌年以降に繰り越せたり、家族への給与を一定額まで経費にできたりするメリットもあり、税金面で非常に有利になります。
経営者としての意識が高まる効果
開業届を税務署に提出し、「個人事業主」として正式にスタートを切ることは、あなたのサロン経営に対する意識を大きく変えるきっかけになります。
「趣味」ではなく「事業」として捉えることで、売上や経費、利益といった数字に対する意識が高まり、どうすればもっとお客様に喜んでもらい、事業を安定させていくかという経営者としての視点を持つことができます。
この意識改革は、あなたのサロンを成長させていく上で非常に大切な要素です。
社会的な信用を得られることの利点
開業届を提出していることは、あなたが社会的に認められた事業者であることの証明になります。
これにより、お客様からの信頼を得やすくなったり、将来的に事業拡大のために必要な融資や補助金の申請ができるようになったり、他のサロンオーナーや事業者との連携がスムーズになったりするなど、様々な場面でプラスに働きます。
あなたのサロンの信頼性が高まり、ビジネスチャンスが広がる可能性があります。
今からでも間に合う!開業届を出していない人が取るべき行動
「ここまで読んで、開業届を出していないリスクが分かった…どうしよう!」と不安になっている方もいるかもしれません。
でも、安心してください。
開業届は、提出期限を過ぎてしまっても受け付けてもらえますし、すぐに何か罰せられるわけではありません。
今からでも正しい行動を取れば大丈夫です。
まずは落ち着いて状況を把握する
開業届の提出が遅れていても、慌てる必要はありません。
まずは、あなたがいつ頃から自宅サロンとして事業を始めたのか、これまでにどれくらいの売上や経費がありそうか、おおまかで良いので整理してみましょう。
もし、これまで全く確定申告もしていなかった場合は、過去の分の申告についても検討が必要になるため、少し状況が複雑になります。
税務署や税理士に相談することを検討する
もし、開業届の提出が遅れている期間が長かったり、これまでの売上や経費の計算に自信がなかったりして不安が大きい場合は、一人で抱え込まずに専門家に相談することをおすすめします。
お近くの税務署の窓口では、無料で相談に乗ってもらえます。
「開業届を出すのが遅れてしまったのですが…」と正直に相談すれば、今後の手続きについて丁寧に教えてくれます。
また、無申告の期間が長い場合や、過去の確定申告についてまとめて対応したい場合は、税理士に相談することも有効です。
税理士はあなたの状況を正確に把握し、必要な手続きや税務上のアドバイスをくれます。
費用はかかりますが、安心して問題を解決するためには有効な選択肢です。
自宅サロンの開業届を「提出する具体的なステップ」
では、実際に自宅サロンの開業届を提出するには、具体的にどのような手順を踏めば良いのでしょうか。
手続きは想像よりもずっとシンプルです。
ここでは、開業届を提出するための具体的なステップを、一つずつ見ていきましょう。
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提出書類は「個人事業の開業・廃業等届出書」
開業届の正式名称は「個人事業の開業・廃業等届出書」といいます。
この書類一枚を提出します。
書類は、お近くの税務署の窓口でもらうか、国税庁のホームページからダウンロードすることができます。
書類には、あなたの住所、氏名、マイナンバー、サロンの屋号(任意ですが、決めていれば記入できます)、事業内容(「エステティックサロン業」「リラクゼーション業」など具体的に)、開業日などを記入します。
記入例も用意されていることが多いので、それを見ながら書けば難しくありません。
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どこに提出するのか
記入済みの開業届は、あなたの「納税地」を管轄する税務署に提出します。
個人の場合の納税地は、原則としてあなたの住所地です。
つまり、住民票がある場所の近くにある税務署に提出することになります。
どこの税務署に提出すれば良いか分からない場合は、国税庁のホームページで管轄の税務署を調べることができます。
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提出期限と提出方法
開業届は、事業を開始した日(お客様から初めて料金をもらった日など、実質的に事業を始めた日)から1ヶ月以内に提出することとされています。
もしこの期限を過ぎてしまったとしても、罰則はありませんので、気づいた時点でできるだけ早く提出しましょう。
提出方法は、管轄の税務署の窓口に直接持って行くか、郵送することも可能です。
提出した控えが必要になることが多いため、提出用と控え用の2枚を作成し、税務署に持って行くか、郵送の場合は控えと切手を貼った返信用封筒を同封しましょう。
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青色申告承認申請書も忘れずに提出しよう
税金面でメリットの大きい青色申告を選択したい場合は、「所得税の青色申告承認申請書」も合わせて提出する必要があります。
この申請書も、開業届と同じく税務署の窓口か国税庁のホームページで入手できます。
青色申告をしたい年の3月15日まで(その年の1月16日以降に事業を開始した場合は、開業日から2ヶ月以内)に提出する必要があります。
開業届と同時に提出するのが一番忘れにくい方法なのでおすすめです。
提出した開業届の「控え」は大切に保管!
税務署に提出して受付印を押してもらった開業届の控えは、あなたが個人事業主として開業したことの重要な証明書類になります。
事業用の銀行口座開設や、将来的な融資・補助金の申請などで必要になることがありますので、紛失しないように大切に保管しておきましょう。
まとめ
この記事では、自宅サロンの開業届について、出さない場合のリスクや、出すことのメリット、そして具体的な提出方法までを詳しく解説しました。
最後にこの記事の重要なポイントをまとめます。
自宅サロンでも、継続的に収入があるなら事業とみなされ、開業届の提出は法律上の義務です。
開業届を出さないことには、青色申告による大きな節税メリットを受けられない、無申告加算税や延滞税が課される可能性がある、社会的な信用を得にくいなど、税金面やその他の様々なリスクが伴います。
税務署にバレる可能性もゼロではありません。
しかし、開業届を出すことで、税金が安くなったり、事業主としての意識が高まったり、社会的な信用を得られたりといった、あなたのサロン経営にとってプラスになる多くのメリットがあります。
もしまだ開業届を出していないという場合でも、今からでも遅くはありません。
この記事で紹介した提出ステップを参考に、個人事業の開業・廃業等届出書と、青色申告をしたい場合は所得税の青色申告承認申請書をできるだけ早く提出しましょう。
手続き自体は難しくありませんし、正しい手続きを行うことで、あなたは安心してあなたの自宅サロン経営に専念できるようになります。
これからあなたの自宅サロンがさらに発展していくことを応援しています!
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